小林良生理事より 鮫島一彦会長への手紙より ・ケナフプロジェクトの検討への道筋

ケナフ協議会のこれからプロジェクトへの提案として、小林良生理事より鮫島一彦会長へお手紙がありました。今までの関わったことから今後の道筋への提案です。皆様にぜひ一読下さい。今後のケナフ協議会が進めるプロジェクトを共に考えて行きましょう。

 鮫島一彦 先生

 2021年9月3日 

 ケナフプロジェクトの検討への道筋 

拝復

大雨が過ぎて秋の訪れを感じるようになりました。 
お手紙を拝受して、ご返事を書かねばならぬと思いながら、延びのびになり申し訳ないと思っております。 

パソコンが使えず、メールの交信が出来ない私を会員として残して頂けるとは、有難いことです。 

ケナフプロジェクトは、発案の米国をはじめ、それに追随した中国、タイ国で追試されましたが、いずれも成功しませんでした。 

日本の場合は、最初は通産省の四国工誠がタイとの国際研究協力で取上げ、非木材原料のchemi-TMPを製造するという研究内容で取上げました。当時、実験室サイズのTMP装置が考案され、研究所に設置されたからですが、ケナフには化学パルプ化でないと不向きでしょう。 

稲垣先生は、神崎製紙の水戸さんから中国、湖南省の源江造紙厰でケナフからの製紙を研究されている話を聴き、友人の北川石松氏に話しました。北川氏は当時環境庁の長宮をされていておられ、ケナフが地球環境の観点からみて、森林からの材木の代替資源として興味深い資源だと考えられたのです。 

そこで環境庁は定年間近い岡崎洋氏(当時、地球環境フォーラムの理事長)のもとに「ケナフは材木の代替原料になり得るか」という観点で調査をしたものです。その点は先生は当然ご存じだと思います。 

その時の前提は、

① ケナフの生産・栽培・パルプ化は中国、湖南省(洞庭湖の南部、中国では麻の産地)で行う。 

② パルプ化KP法 

③ 製紙して、日本に輸入する。というものでした。 

委員会では 

農業分野 小林、勝井徹 

パルプ化 阿部健一郎 

が調査している。

別に 、農水省農林水産技術会議事務局でも鈴木孝仁氏らが経済性を調べている。 

このような調査結果は経団連でも反響を呼び、岡崎氏は1995年(社)経済団体連合会に調査を依頼した。その結果、IRR(内部投資収益率)は7.41%、キャッシュフローはマイナス2,469万ドルと報告され、利益は出ないとの結果になり、中国で生産して、輸入するのは利潤が得られないとの結論であった。

この結論からケナフプロジェクトは日本国内で民間ベースですることを稲垣先生が提案されて、現在のケナフ協議会が発足した次第である。  

稲垣先生は、庶民に呼びかけて、環境問題を様々な視点から趣味点に遊ぶというニュアンスが強かったように思う。一時的な流行で、工業化するような事業にならなかった。 

新しく再出発するケナフ研究事業は、やはり、岡崎氏の路線をとるべきであろう。ただ、企業化は海外ではなく、国内とする。 

目標は、

(1) 経済的、環境にやさしい栽培法。 

(2) プロセスは、ソーダ法、KP法、など。 

(3) 品質はKP並み、以上。 

(4) コストを少なくともKP並み。そのために特殊紙などの開発も一案。 

敬具